発表の準備が何とか終わったので駄文をば一つ。
今日のお昼の会話中,うちの先生が
「ヨーロッパってすぐ実用にならないような研究を真摯にやりますよねぇ」
と言いだしました。いや,企業出身の先生なので当然の疑問かもしれません。
しかしぼくとSわ君はそれまで何の役にも立たない研究をやってきたので,「何をいまさら」+「日本ってそういう研究に冷淡だよねぇ」と,これまた紋切り型の反応をしてしまいました。
さて,その後「確かにヨーロッパはおかしいですねぇ,実はこんな研究が…」とぼくが言い出したのが四つ。
(1)マーフィの法則:「テーブルから落ちたバター付きトーストは必ずバターの面を下にして着地する」を理論的+実験的に研究。(実際にバター付きトーストを落としまくった。)
(2)磁場を使ってカエルを(生きたまま)浮上させた研究。(動画ありhttp://www.hfml.ru.nl/pics/Movies/frog.mpg)
(3)ラトルバックの力学的研究
(ラトルバックってのは,カヌーみたいな形をした独楽のおもちゃで,くるっと回すとそのうち摩擦でだんだんと止まるのだが,一回停止した後,がたがた言いながらその後逆向きに回転し始めます。…えぇっ!重心周りの角運動量が保存して無いじゃん!!というシロモノ)
(4)水切り(平たい石を水面に投げてぴょんぴょん飛ばして回数を競う遊び)の流体力学
(英語ではstone skippingと言います)
で,(1)~(3)はイギリス,(4)はフランスの研究者によるものです。いずれも物理学の専門雑誌に掲載されています。ちなみに(1),(2)はイグ・ノーベル賞を受賞していて,ぼくはイグ・ノーベル賞の本を読んで知りました。もうひとつちなみに,「カエル浮上」の研究者の一人は「Berry phase」のSir Michael Berryです。ええーー
んで,こう,「イギリスってすごいよねぇ。フランスってのも納得だよねぇ」とかいう話になったわけです。そこで実際のメカニズムの話になって,「なんでカエルが浮くの?」とか聞かれるわけです。
・・・・・・・・・答えられず。
さっき調べました。
こういうことらしい。
磁場は単極子がないことを除けば静電場とほぼおなじ法則に従うので,Earnshawの定理が成立し,ふつうは磁場中に磁性体をおいても安定な点は見つけられない(磁性体二つの場合は,ひきつけあってくっつくか,反発して無限大まですっ飛んでいく)。つまり,磁場だけでものを浮かせることは出来ない。
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しかしそれは磁性体が常磁性体か強磁性体の場合であって,反磁性体にはこの定理は適用されない。
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反磁性はあんまりなじみがないけれど,実はすべての物質は電子を持っているから反磁性を持っている(ラーモア反磁性)。
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反磁性の程度は物質によりけりで,普通はごく微弱だけど,その中で水はバルクで反磁性体である。(超伝導体は完全反磁性を持ってるが,これは今の議論の対象外)
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生物は水が多い。
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特にその生物が十分軽くて水をたくさん含んでいれば…
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磁場で浮く!!
↓
それならカエルだ!!!
ということで,カエルなのです。
(ちなみに,リニアモーターカーの浮上原理はまったく違います。それにしても「ジェイアール式マグレブ」って言い方ってカッコいいよねぇ)
がんばれば人も浮きます・・・・と言いたいところですが無理でしょう。なんせ,たかーい超伝導磁石を使ってがんばって20テスラなのに,カエルで16テスラ使いますから。また,このくらい超強磁場になるとニューロンに影響が出るみたいですしねぇ。
うーん。
1 件のコメント:
久々に笑いました~~~蛙がういてましたよ!!!驚。
物理は出来ない私がいうのもなんですが~
すごいっす。
大学の時からですが、時に笑いと感動を与えてくれる学問?!!だとぉ~~♪
久しぶりに理科大潜りこもうかなぁ~~
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