「銀河鉄道の夜」冒頭部分の天体に関する授業の中で,先生が
「そんなら何がその川の水にあたるかと云いますと、それは真空という光をある速さで伝えるもので、…」
という説明をしますが,「真空」のこれほど的確な説明はないといつも感嘆します。
電磁気学や相対性理論を勉強すると,真空がエーテルのような媒質でないことはわかるのですが,何か実体であると考えざるを得なくなります。実際にカシミール効果のような観測可能な効果を生み出しますし。
大学の学部の時,うちの親父がそのころコンノケンイチにはまっていて(失笑)
「光だって波だってんだから,何かを媒質にして振動しているんだろ??」
というべたなエーテル観念を振りかざしてきたので,
「だから媒質なんかないんだって。真空だって。真空はそういうもんなんだよ!」
と逆切れしたことがありました。その後,「銀河鉄道の夜」のこの節を読み返した際は,それまでに何度も何度も読んだはずなのにえらい感動してしまいました。電磁気学(というか電磁波=光)の理解としても正しいし,「真空」なのに「実体」ということも適切に表現している。
別の個所では宗教に関する深い懊悩が書かれていて,それもまたぼくには衝撃的に理解できたのですが,一方で適切な科学理解,もう一方で宗教的苦悩を書き切るなんて,宮沢賢治はすごいなぁとやはり思います。
ちなみに,ぼくは「ブルカニロ博士編」(いわゆる第三次稿)が一番好きです…でも,やっぱり公平にみたら第四次稿が完成度が高いよなぁ…
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