2009年4月22日水曜日

磁気と生体(5)

さて,第1回「磁気と肩こり豆知識」続き

「■磁気治療は古代ギリシアの時代から」の第3段落続き。

「昭和36年の薬事法施行令の中で、治療器具のひとつとして正式に登録されている。」

これは確かに事実です。施行令の別表第一(第一条関係)の八十一に「磁気治療器」として挙げられています。平成21年1月に改正された施行令でも同様です。

薬事法においては,家庭用磁気治療器は管理医療機器(クラス2)に分類されており(1758 家庭用永久磁石磁気治療器),現在は厚生労働省所管の独立行政法人医薬品医療機器総合機構が医療機器の認証を行っています。

「厚生労働省認可」というのは,この医薬品医療機器総合機構が出している認可のことなんでしょうね。

しかし,この事実はともかくとして,だから何だというのでしょうか。

「国が認めた=効果が実証されている」とでも言いたいのでしょうか?

薬事法施行令に登録があるということは,また,医薬品医療機器総合機構が認可を出したということは,いずれも磁気治療が有効であることの科学的・医学的根拠にはなりません。

もちろん,これらの含みとしては「大規模かつ厳密な臨床試験が行われた上で有効性が確認されたのだから,登録がある,認可されている」となるかと思います。

(にしても,このような文章は詭弁であり,このように行間を読む必要はないのですが,詭弁に対して免疫のない人はこのように解釈してしまうと思います。)

医薬品医療機器総合機構の「医療機器の認証基準に関する基本的考え方について」を読むと,医療機器の認可に際してその機器が使い方を誤ると人体に危害を及ぼすようなものでない限りは,臨床試験が必ずしも行われるわけではないようです。

これは,認可するかいなかの基準としてその機器の危険性の有無を上位に持ってきているためでしょう。危険でも臨床試験の結果,十分に恩恵が得られることが分かったならば適切な管理をするという条件で認可しましょう(使いましょう),危険じゃないなら,メーカさんが効果はあると主張されるなら,それを信じて認可はしましょう,というところでしょうか。

さて,この昭和36年の家庭用永久磁石磁気治療器の認可に際して臨床試験が行われて効果が確認されたのかどうかは残念ながらぼくはわかりません。ですが,前段の「有効性はとっくに確認されて」という言明が正しくない現在の医学界の情勢から,もし行われていたとして,さらに認可に臨床試験による有効性の証明が必要であったとしたら,おそらく認可は下りなかったのではないでしょうか。

まあ,これは単なる推測です。

磁気治療器が厚生労働省の認可を受けているというのは,事実です。しかし,そのことと,磁気治療器に効果があるかどうかは関係ありません。

最後に今回の記事について補足。

この「磁気と生体」検証シリーズでは,これらの記事が「サイエンスストーリー」を標榜している以上,その主張の科学的妥当性について検証していくのが目的です。

したがって,この「磁気と生体」シリーズについて,筆者の個人的信念が表明されている部分に関して価値判断をする場合はその旨明記するつもりです。

ぼく自身は磁気治療法に懐疑的ですが,磁気治療法に効能があるという結果を導いている研究が存在していることについて懐疑的ではないし,科学的に検証することが第一に重要だと考えます。懐疑的であるということは,むやみに否定的であるということではありません。もし十分に検証したのち「どうやら効果がありそうだ」との結論に至れば,それを表明します。

今回取り上げた部分に関しては,科学的な言明でもなければ個人的信念の表明とも言えません。

しかし,この文章は読者に強制的に行間を読ませる非常に悪質な詭弁であるし,この部分が唐突かつ脈絡もなく存在しているということが,これらの文章の「サイエンス」を致命的なまでに貶めているため,強く否定しました。

ぼくは,この一文があったというだけで,この文章は疑似科学・似非科学であると断定してよいと思っています。

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